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小学校英語教育、その光と影

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2020年度の学習指導要領改訂に伴い、小学校3年生で英語がスタートし、
5・6年生では教科化されたことをご存知ですか?

今、小学校では、
3,4年生は週1時間
5,6年生は週2時間の英語授業を行っています。

英語の時間、子どもたちはどんなことをしているのでしょうか?

小学校英語の現状

小学校での英語学習は、大きく分けて、3,4年生、5,6年生と、2期に分けて考えられています。
それぞれどんなことをするのか見てみましょう。

3・4年生:英語活動

  • 週1時間程度、聞くことと話すことに重点を置いた授業が展開されています。
  • 教科書はありません。
  • 英語を楽しく学ぶことを第一に、ゲームや歌などを取り入れたアクティブな授業が人気です。

5・6年生:(教科としての)英語

  • 週2時間になり、教科書が登場。アルファベットや単語も学習するようになります。
  • しかし、実際の授業では、依然として「話す・聞く」活動が中心で、複雑な文法や単語の暗記は後回しになっていることが多いです。
    (むしろ、文法や単語の暗記は「小学校の間はやらない」選択のところが多いと思われます)
  • テストは、単語の穴埋めや簡単なリスニング問題など、子どもたちが取り組みやすい内容が中心です。



学習指導要領と実際の授業

学習指導要領によると、5,6年生時の学習内容は
・リスニング活動
・リーディング
・ライティング
・ゲームやアクティビティ
・プレゼンテーション
・プロジェクト学習(グループでテーマを決めて調べたり、発表を行ったりする活動

など、幅広い活動が求められているそうです。

しかし、実際の授業では、学校や先生の工夫次第で内容が大きく異なり、
必ずしも「学習指導要領」で規定されている通りではないようです。

実際、うちの子の小学校では、
「リスニング活動」
「ゲームやアクティビティ」
「プレゼンテーション」
「プロジェクト学習」

はありましたが、その他の活動に関しては、

「あったかな??」

という感じでした。



小学校英語の課題

現在小学校の英語授業で起こっている課題は、どんなものがあるのでしょうか?

考えられるいくつかの要因について、見てみましょう。

1.単語の習得

  • 小学校で習う単語は600~700語とされていますが、
    実際に書いたり読んだりする機会は限られています。
  • 教科書に載っていれば「既出単語」とみなされるケースが多く、
    単語の定着が不十分なまま次のステップに進んでいる可能性が高いです。

実は、ここが「中学英語」へ向けての一番のネックになっているんです。

というのも、小学校では、

(私たちが中学生時代に行ったような)
「単語テスト」はない、

からです。

どういうことかというと、
テストなどで単語の定着をチェックすることもなく、
次々と新しい単語を目にするだけ。
その繰り返しで、気づいたら中学生…というのが現状です。

2.英語力への影響

  • 小学校では、英語を楽しく学ぶことを重視するため、
    文法や単語の厳密な学習が後回しになる傾向があります。
  • その結果、中学以降の英語学習で苦労する子どもも少なくないようです。

これもまた、「中学英語」のハードルを高くしている原因です。

見たことある(気がする)
聞いたことある(気がする)
読んだことある(気がする)…

英文に対して、その程度の認識で、次々と進んでいくので、

例えば、
「今のことを言っている文」
「過去のことを言っている文」
など、強く意識することもないまま、単元が終わっていく、
ということも珍しくありません。

中学校では、それらを全て「文法学習」という「理論」で説明していくため、
戸惑い・混乱などが生じやすくなり、

「(英語楽しかったけど)嫌いになった」
「英語苦手~」

という子が増えていきやすくなってしまうのです。

3.先生方の負担

  • 英語が専門ではない先生も多く、
    教材作成や授業の準備に苦労しているケースがあります。

大学で、小学校の教員免許を取得するためには、
「心理学」「教育学」など、「教職課程」と言われるものと、
各教科を指導するためのもの、
2種類の授業単位の取得が必要となります。

もちろん、大学でのメインの「専攻科目」は1つです。

つまり、教員免許を取得するため、本来の専門教科とは別に、
様々な単位を取得している人が大半だということです。

ということは、小学校の先生は、ほとんどの教科が自分の専門外となります。

なので、大学で「英語」を専門に学んだ先生以外、
英語は「専門外」となってしまうのは仕方がないことと言えます。

なぜ、このような状況になっているのか?

このような状況がわかっているのに、
それでもなお、小学校の英語授業では課題が山積みなのはどうしてなのでしょうか?

そこには、「小学校」ならではの事情があるのです。

1.英語を嫌いにさせないため

  • 小学校では、まず英語に興味を持ってもらうことが大切と考えられています。そのため、難しい文法や単語の学習は避けられがちです。

    小学校の英語教育で最も重要視されているのは、「コミュニケーション能力の育成」。
    英語を単なる教科として学ぶのではなく、実際に使って話すことが大切だと考えられています。
    そのため、「文法」「単語」といった、難しい内容を学習することを避ける、というのも
    一つの戦略と言えます。

2.授業時間の制限

  • 週2時間という限られた時間の中で、すべての学習内容を網羅することは困難です。

    たった週2時間の英語授業。
    とても、学習指導要領で求められている全ての内容を行うことは不可能です。
    効率的に、楽しく授業を行うためには、
    何を行い、何を捨てるか…
    そんな取捨選択に迫らている先生も多いのでは?

3.先生のスキル

  • 英語が専門ではない先生にとっては、文法や発音の指導が難しい場合があります。

    「発音」に関しては、誰もが納得できると思います。

    英語の発音って、難しいですからね。
    だからこそ、ALTの先生を導入しているのでしょうけれど…

    しかし、「文法」に関しては、

    「大学卒業しているのに、英語の文法、教えられないってどういうこと?」

    と疑問に思われる人が多いかもしれませんね。

    しかし、残念ながら、事実です…

    以前、塾講師をしていた時、
    中学生に対し、英語の「文法事項」の説明をまともにできていない大学生がいました。

    それも1人ではなく、複数名…

    理由は簡単。

    大学生本人が、英文法を「理論」ではなく、
    「丸暗記」で覚えてきているからなのです。

    英語を専門とし、英語に対して深く考えてきた経験がある人なら、
    かみ砕いた説明をすることができます。

    というのも、大学で「英文法」や「英語教授法」といった、
    英語の理論をしっかり体系的に学ぶからです。

    例えるならば…
    「自分が今まで体験してきたお仕事内容について説明してみて」
    と言われたら、しっかり説明できるけれども、
    「他部署の仕事について説明して」
    と言われたら、
    途端にしどろもどろになってしまうようなものでしょうか。


    それに対し、学生時代、さらっと「点数」のみを追い求める勉強しか行っていない人は、
    内容を深く説明することができません。

    なぜならば、一つ一つの事象について、深く理由を考えてきたことがないためです。

    例えるなら…
    「『さんぽ』って、なぜ『散歩』という字を使うの?」
    と聞かれて、すぐに答えられないようなものです。
    (少なくとも、私は、すぐに答えがうかばなかったです(苦笑))

    ましてや、小学生に対して何かを説明する場合、
    中学生よりも簡単な言葉で、わかりやすく話をすることが必要です。

    実は、
    「誰にでもわかりやすく、簡単な言葉で説明する」事って、
    中途半端な理解しかしていない事柄に対しては、とても難しいんです。

    こういったことを考えると、
    どうしても、小学校で細かな「英文法の説明」は、
    難しいというのが現状です。


まとめ

小学校の英語教育は、子どもたちが英語に興味を持ち、楽しく学ぶことを目指しています。
しかし、一方で、
単語の定着や文法の理解が不十分なまま中学に進学する子どもも多いというのが現状です。

小学校での英語学習が、中学生以降の英語教育の「足かせ」にならないよう、
私たち親が子供たちのサポートをどうしていくかが、今後の課題になっていくと思われます。

学習指導要領の大幅改定から4年がたちます。
今後の英語学習がどうなっていくか、しっかり注視していきたいと思います。

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